あざな悠良のよもやま話

備忘録を兼ねていろいろな情報を発信していきます。

介護職として働いていた頃のリアルなつらさ

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介護職として働いていた頃、職業をきかれて答えると「たいへんな仕事をしてるんだね」と、よく言われました。

 

確かにきつい仕事ではありますが、介護以外の仕事も経験している身からすると、「いや、どんな仕事でも、それぞれたいへんなことはあるでしょうよ」というのが正直な気持ちです。

 

そして、その「たいへんだね」という言葉にこめられているイメージと、実際の現場でのたいへんさには、けっこうな距離があるとも感じているので、余計に素直にうなずけないという部分もありました。

 

そこで、今回は、介護職として働いていた頃、何が本当につらかったかという本音を吐き出してみようと思います。

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3Kのつらさ

 

過酷な労働環境を表す言葉として、3Kという言葉を一度くらいは耳にしたことがあるかと思います。

 

きつい、汚い、危険。

 

介護職という仕事の場合、「給料が安い」というのもあるので、実質4Kではないかと思っているのですが。

 

まずは、この3Kについてです。

 

体力的なきつさについて

 

四肢麻痺などで寝たきりの人の介助も行いますし、夜勤が必須な職場が多いので、体力的なきつさは確かにあります。

 

80kg以上の人を持ち上げたり、1日に1万歩以上歩き回る職業って、そうそうありませんものね。

 

ただ、慣れでどうにかできる部分もかなりある、というのも事実です。

 

だって、体力的にきつい職業であれば、スポーツ選手というものだってあるではないですか。

 

彼らは、仕事にしているスポーツの動きを理解して、最高のパフォーマンスを行うために必要な努力をして、糧を得ている。

 

介護職も、そういった意味では同じようなものです。

 

ただ、十分な年俸がもらえているスポーツ選手であれば、体力的に限界を感じた時点で引退を選ぶこともできますけれども、介護職はそうはいかない

 

実際、私もアラフォーに突入してから介護の仕事に就きまして、慣れるまではめちゃくちゃ消耗してましたよね。

 

帰宅したら即寝落ち、みたいな日々が半年ほど続きましたが、慣れてきてからは休日に遊びに行く余裕も出てきまして。

 

40代半ばを過ぎた頃から、再びきつくなってきましたっけ。

 

気をつけていても、筋力も、行動するスピードも、徐々に徐々に落ちていく、それが老化。

 

定年まで現場で勤めあげるのは厳しい職業です。

 

とは言え、管理職やケアマネージャーとしての道にすすむことで介護の世界に関わり続けることは可能なので、体力が続かなくなったらそこで終わり、ということはありません。

 

ただ、腰をやられることが多いのはどうしようもないかもしれません。

 

一応、介護の資格を取る時には、ボディメカニクスと言って、力学的原理を活用することで、介助する側とされる側、双方の身体的負担を減らす方法について学ぶことができます。

 

しかしですね、すべての場面においてそれが使えるかと言ったら、そんなことは無いわけで。

 

人間相手ですから、荷物のように持ち上げるのは失礼だと重々承知の上で、行わなければどうにもならない事態というのも起こり得るのです。

 

さすがに、60kg以上を力業で持ち上げると、腰にきますわね(遠い目)

 

また、入居型の介護施設などにおいては、夜勤が必須です。

 

夜間帯の勤務は夕方頃からスタートして、翌日の昼前くらいに終了するパターンが多く、勤務時間は残業込みになると20時間を超えることもあります。

 

眠いことは眠いですが、からだに良いかどうかは別にすれば、寝ないのも意外と慣れます。

 

ただし、職員が少ない職場だと、夜勤明けで昼過ぎに帰宅して、その翌日の朝7時にはまた出勤、などという地獄のスケジュールを組まれる場合もありますので、体力の回復が追いつかないということがあります。

 

だいたいの職場では、夜勤明けの翌日は休日になるはずなのですがね。

 

というわけで、年齢的に定年まで余裕があり、健康体であれば、そこまで体力的に厳しい仕事ではない、というのが私の実感です。

 

そこまで汚れ仕事ではない

 

他人様の排泄物などを処理するのも業務の一つなので、汚い仕事呼ばわりされてしまうのも仕方がないのかもしれません。

 

でも、別に、素手で処理するわけじゃないですしねぇ。

 

逆に、感染症予防についての意識が高いので、マスクやゴム手袋の着用はもちろんのこと、排泄に関わった後にはうがいや手洗いを必ず行うように徹底している施設ばかりだと思います。

 

もしも、排泄物を扱うだけで汚いと言う人がいるなら、自分がトイレに行く行為はどうなんだとききたい。

 

ただ、やっぱりね、匂いはきついな、と思うことはありましたね。

 

マスクをして、鼻から呼吸をしないようにすれば耐えられますけれども。

 

実は、大よりも小の方が匂いはきつい場合が多いんですよね、いらん知識ですが。

 

危険は自分だけのものではない

 

介護の現場での代表的な危険としては、転倒などのリスク、そして、汚いのところで少しふれましたが、感染症のリスクがあげられます。

 

まず転倒などについてですが、入浴介助も業務のうちなので、濡れた床で足をすべらせたり、つまづいた人を支えるつもりで一緒にころんでしまったり、ということが考えられます。

 

感染症については、ノロウイルスやインフルエンザウイルスへの感染がありますね。

 

また、入居者の中に感染するタイプの持病を持っている人がいたこともあります。

 

たいていの職場では、先に少しふれたように、それらを予防するための取り組みを行っています。

 

完全に防ぎきるのは難しいにしても、まず予防に努め、万が一発生してしまった場合の対処の仕方までが確立されているので、それらのルールを守りさえすれば、危険な事態にはそうそうなりません。

 

実際に見聞きした危険な事故って、だいたいがうっかりだったり、決められたルールを破っていたりした結果だったりするのですよね。

 

この危険というやつ、例えば感染症であれば、高齢者は抵抗力が落ちている人が多くて亡くなってしまうケースがありますので、職員よりも入居者の方がリスクは高いと言えます。

 

予防につとめるのは自分のためだけではない、ということが身にしみていれば、ルールを守るのを怠るなんてことはできないのではないかと思うのですけれども。

 

そのあたりは、悲しいかな、モラルが残念な職員も存在するのですよねぇ…。

 

現場でのつらさ

 

 私は、いわゆる3Kについては、ある程度は対処しようのあるものと考えています。

 

その証拠に、実際の現場では、それ以外の理由で辞職していく人の方が多かったです。

 

2大トップは、「給料が安い」、そして「メンタルがもたない」。

 

3番目が、腰痛の悪化など、からだの理由

 

給料が安い

 

介護職のお給料は、職場によってまちまちですが、年収にすると250万円前後というのが一般的だと思います。

 

社会保険完備で手取りが17万円前後、賞与あり、という感じ。

 

この金額、一人暮らしであればなんとかやっていけますが、所帯を持つにはちょっときついですよね。

 

私の知り合いの男性職員も、彼女と結婚したいけれど、今の給料じゃやっていけないから、と転職を決意していました。

 

また、職場での職員の充実具合や、入居者の介護度の重さによって、職員一人一人の業務の負担の度合いが違ってくるわけですが。

 

負担が大きすぎる場合、この金額では割に合わない、と考える人もいます。

 

私が以前勤めていた有料老人ホームは、ユニット制と言って、フロアごとに介護度の重さで入居者を割り振っていましてね。

 

ざっくり言うと、自分で歩いて、身の回りのこともできる入居者が多い自立フロアと、寝たきりの入居者が多い重介護フロアに分かれていたわけです。

 

当然、重介護フロアは、オムツの交換をしたり、入居者が車いすで移動する時に付き添ったり、一人で食事ができない人の介助に入ったり、と、自立フロアよりも仕事量が多い。

 

なのに、給料は同じ。

 

もちろん、自立フロアは自立フロアでたいへんです。

 

重介護フロアは体力勝負ですが、自立フロアは接客がメインになってくるので、メンタルをやられることが多いんですよね。

 

ただ、職員の担当替えって頻繁に行われるものではないので、そういう違いに意識を向けることができずに不満を積もらせていって爆発してしまう、という人もいるわけです。

 

メンタルがもたない

 

先に書いたように、介護職は、接客業でもあります。

 

入居者は、自分なり、家族なりがお金を払って施設に住んでいるお客様。

 

中には「お客様は神様」だと思っている入居者や、その家族がいるわけです。

 

こういう人たちは、他の入居者よりも自分たちを優遇することを当たり前のように要求してきます。

 

これは、いまだに不思議。

 

だって、入居者って、みんな同じ料金を払って施設に入所しているのですよ。

 

なのに、どうして他の人よりも自分を優遇しろなんて言えるのかしら。

 

他の神様に迷惑なんですけど。

 

仕事ですから、言いませんでしたけど。

 

職員としても、できる限りのことはしようと思って働いてますけれども、常識範囲外の要求は拒否しますよ。

 

例えば、持病でアルコール厳禁の人に「酒を飲ませろ」と要求されて、拒否したからって「クビにしてやる!」なんてわめかれてもね、困っちゃうんだなー。

 

あとは、セクハラ。

 

介助でからだを支えている時に、ついでのようにおしりをさわられたりだとか。

 

鍵がかかる部屋にベッドがある職場ですから、不心得を起こす人もまれにいたりして。

 

だいたいにおいて体力的には職員の方が優位な場合が多いのですが、たまに、体格のいい入居者だとこわい思いをすることがあるんですよね。

 

このあたりまでは、まだまだ笑って対処できる範疇ですが。

 

認知症の人が関わると、事態が一気に笑えなくなります。

 

認知症というのは、情報を理解したり、判断したり、解釈したりといったことがうまくできなくなる病気です。

 

そのため、最初は自分の意志で施設に入所したのだとしても、そのことを忘れて元の家に帰りたがり、それが徘徊につながったり、ティッシュや排泄物などを食べ物ではないと認識できずに食べてしまったり、被害妄想から職員や他の入居者に暴言や暴力をふるったりすることがあります。

 

歩行が困難な人だと、自分が歩けないことがわからずに一人で行動しようとして、ケガにつながったりすることもあります。

 

理屈で説明するだけでは理解してもらえることは少なく、理解したとしても、そのことを忘れて同じことをくり返す。

 

暴力だって、ちょっとたたかれた、なんてものではなく、こちらが骨折するくらいのレベルのものがきます。

 

病気が原因であるとわかっていていも、かなりメンタルを消耗しますし、徘徊や異食を防止するために業務量も増えます。

 

たまに介護疲れによって家族を手にかけた人のニュースが流れますが、肯定はできないものの、「無理もない」と思う自分もいるのです。

 

そこへ、人間関係が拍車をかけます。

 

職員や看護師の中には、認知症起因の入居者のケガを予防できなかったり、暴力をよけきれずにこちらがケガをしたりした場合、すべてがこちらの責任であると責めるような、かなりクセの強いタイプがいたりします。

 

入居者の家族にも、暴力をふるわれた際にこちらが抵抗して、万が一、入居者にケガを負わせてしまった場合 、こちらを訴えかねないタイプがいます。

 

今、介護の現場から離れてみて、しみじみと「おかしい人がいっぱいいたなぁ」と思いますよ。

 

この「病気が原因なんだし、介護職員は金をもらってるんだから我慢しろ」的なものは、本当にどうにかならんかな、と思います。

 

金をもらってたって限度があるわ。

 

人間関係で言うと、介護業界というのはいつでも人手不足なので、他の業界でドロップアウトした人が流れ着きやすいという面もありまして。

 

新卒で入社してリーダークラスになっている職員の下に、50代の未経験者がつけられたりすると、年齢的なプライドをふりかざして教育ができないとかも見ましたね。

 

施設長よりも勤続年数の長いパートさんとかも猛威をふるいがち。

 

けっこういるんですよね、いろいろとこじらせてる人。

 

そして、知り合いの中には「入居者のお看取りがつらい」と言っていた人もいました。

 

老人ホームの場合、入居者にとっては終の棲家ですから、最後をそこで迎える人も決して少なくありません。

 

病気や老衰で衰弱していく人を見るのは、とても自分が無力に思えるので、慣れないとかなりこたえますね。

 

からだの理由

 

3Kのつらさのところで、体力的にはそこまでではないと書きはしましたが、やっぱりこの理由も不動であります。

 

私自身、転職した理由は「四十肩」です。

 

四十肩くらいで、と思われる人もいるでしょうが、あれはマジでつらい。

 

体力勝負の仕事で腕が動かせないって、致命的なんですのよ。

 

一番多いのは、腰をやられる人ですね。

 

既に書きましたが、介助する側のからだに多少は負担をかけないとどうにもできない場面というのは起きるものなのです。

 

しかも、腰は一度やられるとクセになります。

 

ですから、介護職員は、どんなにシュッとした人でも、シャツの下にはコルセット着用が標準装備なのです。

 

つらいことばかりではない

 

 これだけ長々と書いておいて、取ってつけたような感じになるかもしれませんが、介護の仕事というものは、つらいばかりではありません。

 

特に認知症がからむとしゃれにならないので、きつい部分は本当にきついです。

 

ただ、そういう部分をオブラートに包んで、「介護の仕事はつらくないですよ、やりがいがありますよ」なんて宣伝しているのも、何か違うだろうと思うのです。

 

つらいものは、つらい。

 

でも、つらいだけではないからこそ、今、働いている人たちがいるわけですよ。

 

実際にこれだけの理由をあげている私自身が、四十肩にならなければ、まだ介護業界で働いていただろうと思うのですから。

 

では、介護の仕事の何がいいのか。

 

…それについては、申し訳ないのですが、よくわかりません。

 

こうしてつらい理由を書き出してみて、「よく続けていたなぁ」と思う反面、また機会があれば転職し直すのもいいかもな、とも思うのです。

 

言語化しづらい何かがあるのか、単純に、人と関わることのおもしろさが凝縮しているからなのか。

 

つらいんですけどねぇ、介護って、間違いなく。