求人サイトなどの介護職の募集を見ると、仕事内容に「介護業務全般」と書いてあることがよくあります。
一つ一つ書いていくと膨大な情報量になるので、掲載スペースの関係上、仕方のないことだとは思うのですが、未経験の人には何のことやらわかりませんよね。
今回は、有料老人ホームでの仕事内容について書いてみようと思います。
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モーニングケア
入居者に声かけをして起床してもらい、トイレなどの排泄介助、洗面、着替えなどの身支度を済ませて、朝食会場へ誘導する仕事です。
入居者の体温、血圧、心拍数などのバイタルサイン計測も含まれます。
20人弱の入居者を夜勤者が1人で担当していたのですが、これがキツい。
だいたい5時くらいから声をかけはじめ、7時30分の朝食開始時間までに会場へ集合してもらうのですが、戦場と言って過言ではありません。
起こして、バイタル計測して、トイレを済ませてもらって、洗面と着替えを手伝って、なんなら車いすへ移ってもらって、会場まで誘導で1セット。
ですが、中には30分に1回トイレに行きたがる人もいたり、認知症を患っている人はベッドや車いすから落ちるかもしれないからちょこちょこ見回りもしないといけない。
唯一の救いは、お年寄りはわりと朝が早いので、5時には既に目を覚ましている人がけっこういるというところ。
二度寝してしまうこともあるので、油断はできませんがね。
私は、入居者の半分以上が自力では歩くのが難しい状態の重介護フロアを担当していたので、150分でギリギリセーフという感じでした。
食事と服薬と口腔ケア
朝、昼、夕の食事は、職員2名体制でフロアを担当していました。
有料老人ホームであれば、施設内に厨房でプロの調理師さんが食事を作ってくれるのが一般的です。
職員の仕事は、配膳と下膳、お一人では食事ができない人の介助、全体の見守り、服薬介助。
誤嚥や窒息を起こしていないか、認知症の人であればティッシュなど異食をしていないか、入居者同士でトラブルが起きていないかなど、見守りには気をつかいます。
食事を食べづらそうにしているなら、体調が悪いのであれば看護師に報告が必要ですし、義歯が合わなくなってきたなどで食事の形態を見直す必要があれば、その対応を考えなければなりません。
また、認知症の人は服薬を嫌がることがあるので、どうやって飲んでもらおうか頭を悩ませることもあります。
食事の後は、歯みがきや入れ歯のケアを行います。
ちなみに、午前中にお茶の時間、午後におやつの時間もあるのが一般的ですね。
排泄介助
歩行が困難な人をトイレにお連れすることも、トイレで排泄できない人のオムツ交換も、すべてひっくるめて排泄介助と呼ばれます。
私自身がそうだったのですが、介護の仕事に就こうと思った時、一番不安に感じるのがこの業務ではないでしょうか。
たしかに、オムツ交換はなかなか重労働ではありますし、下剤が効きすぎてゆるゆるの便がオムツからもれていた時などは、心の中で長ーいため息をつくことになります。
でも、いずれ慣れます。
それよりも、やっぱりデリケートな部分なので、他人の世話になるのは恥ずかしいだとか、プライドが許さないと感じる人もいるわけでして。
歩行が困難なのに一人でトイレに行こうとして転んだり、失敗した汚れ物を隠したりする人の、事故の防止や気持ちのケアの方がけっこうたいへんだったりするのです。
入浴介助
有料老人ホームでは、入居者1人につき週に2回の入浴が基本。
フロアごとに担当者が1名つきます。
施設全体で入居者が50名ほどいると、だいたい3時間くらいの間に15人程度の入居者が入浴することになりますが、日中帯の業務で一番重労働です。
何せ、高齢者は筋肉量が落ちているので、寒がりの人が多い。
その人たちが服を脱ぐ場所ですから、脱衣所や浴場内の室温はかなり高めに設定されるわけです。
高温多湿の場所で3時間、洗髪、洗体、着替えなどの介助でほぼ動きっぱなしになるのですから、業務が終わる頃には担当職員は全員汗まみれになります。
濡れた足場は事故につながりやすいですし、入居者の体調変化がおきやすい場所ですから、精神的にも負担が大きいです。
他にも、お風呂嫌いな入居者になんとか入ってもらおうと試行錯誤したり、お風呂好きな人が長湯したがるのをなだめたり。
なんやかんやありますが、入居者のリラックスした顔が見られるので、やりがいもある業務ではあります。
レクリエーション
毎日行われるものから季節イベントなどの大がかりなものまで、職員が企画します。
毎日のものであれば、体操や園芸、塗り絵や合唱など。
夏祭りやクリスマスなどの大きなイベントになると、1ヶ月以上前から飾り付けなどの準備が行われます。
イブニングケア
夕食後の排泄介助、口腔ケア、寝間着への着替え、バイタル測定、就寝までが1セット。
職員2人体制で、夕食を食べ終わった人から居室へ送って行き、21時が消灯時間になります。
そのまま寝てしまう人もいれば、自室でテレビを観る人など、過ごし方は様々。
また、就寝前に眠前薬の服用が必要な場合もこれに含まれます。
記録記入
施設では、日中帯と夜間帯のそれぞれ最低1件ずつ、入居者全員の様子を記録しておかないといけません。
食事や睡眠時の様子、バイタルや排泄の状態、その他、普段とは何か違う様子が少しでもあれば記録します。
夜勤の仕事
日中帯の職員が退勤した後は、夜勤者1人で見回り、排泄介助、記録記入などの業務を行います。
入居者全員がぐっすり眠っていれば仮眠の時間も取れるかもしれませんが、期待はしない方がよいです。
私はトータルで5年以上、平均週2回程度の夜勤経験がありますが、30分でも仮眠が取れた日は片手で数えられますので。
まぁ、寝ないのも意外と慣れるんですよ。
ただ、認知症の人の徘徊に気をつけたり、入居者の急な体調不良に対応したりというのは、たいへんではありますね。
そういうことが無い日は、「眠れないのよー」と起き出してきた入居者にお茶を出して世間話をしたり、という楽しみもあるのですが。
家族対応
施設を訪れる入居者の家族への対応もあります。
入居者の普段の様子を話したり、お茶出しをしたりです。
毎日やって来る人もいれば、入所時しか来たことがないというような人もいます。
積極的に入居者の様子を聴きたがり、お話しすると喜んでくれる人もいれば、まったく興味なさげな人もいます。
手土産を持って、午後いっぱい過ごしていく人もいれば、30分もたたずに帰る人もいます。
人それぞれ、家族なりの思いがあるのだろうな、と思います。
救急対応と看取り
急な体調変化であったり、あってはならないことではありますが、何らかの事故であったりで、入居者の病気やケガへの対応もする必要があります。
日中であれば、看護師や施設の責任者がいますので、基本的に対応は看護師が行ってくれますし、病院へ行かなくてはならなくなった場合は責任者が付き添ったりします。
ただし、夜勤帯にはどちらも不在です。
看護師が24時間常駐している施設もありますが、数はとても少ないです。
その代わり、看護師は、オンコールと言って、社用の携帯電話で連絡がきたら即時対応できるように待機してくれてはいるので、指示をあおぐことはできます。
それでも、ケガをしている場合の止血や、心肺停止の際の心臓マッサージ、救急車が到着した時点で責任者がいなければ自分が同乗して付き添わなければいけない、などということがありますので、めったに起きることではないですが、覚悟だけはしておきましょう。
また、施設が入居者の終の棲家である以上、看取りも避けては通れません。
私も片手で数えられる数ですが、最後に立ち会ったことがあります。
これも、頻繁にあることではありませんが、必ず起こり得ることなので、心にとめておいてほしいと思います。