実家を離れた今では、母の手料理を食べる機会がほとんどありません。
そもそも料理が得意なタイプではなかったので、毎日ものすごくおいしいものを作ってくれた、という思い出もありません。
それでも、時々無性に食べたくてたまらなくなる母の料理がいくつかあります。
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ワンタンスープ
我が家のワンタンスープは、皮と具が別々です。
作り方は、お湯を沸かしたら豚ひき肉、もやし、スライスした長ネギを投入。
肉に火が通ったらアクをすくって、ワンタンの皮を1枚ずつ投入。
味付けは塩、胡椒、ほんの少しの醤油とゴマ油、と至ってシンプル。
ワンタンの皮が透きとおったら出来上がり。
ぺらぺらのワンタンの舌ざわりが気持ちよくて、口の中をやけどしながら無心で食べ続けてしまいます。
はっと
地方によっては、すいとん、ひっつみ、と呼び名は違いますが、小麦粉を練ったうどん種のようなものをちぎり、手で薄くのばしたものを煮た料理です。
我が家での呼び名は「はっと」。
両親が宮城県出身なので、この名前で呼んでいました。
口に入れるとつるんとした舌ざわりで、薄いところはぴらぴらむっちり、厚いところはもちもちしこしことした歯ざわり。
具材や出汁は各家庭によって違うようですが、我が家は何故か、味の決め手がマグロの味付けフレーク缶詰でした。
お湯を沸かしたら、小麦粉を練った種をちぎってはのばして投入。
具材はスライスした長ネギ、細切りにした高野豆腐。
マグロフレーク缶を汁ごと投入したら、醤油で味を調えて出来上がり。
甘じょっぱくて、不思議な味なのです。
あぶら麩にゅうめん
これも宮城県のご当地ものなのですが、あぶら麩ってご存じでしょうか。
最近では関東のスーパーでもちょくちょく見かけるようになりましたね。
文字通り、お麩を油で揚げたもので、見た目は小さなフランスパンみたいな感じ。
汁物の具にしたり、玉子でとじて丼ものにしたりしますが、我が家では、もっぱらにゅうめんの具として登場していました。
お湯を沸かして、細切りにしたナスとスライスしたミョウガか長ネギ、1cmくらいに輪切りにしたあぶら麩を煮て、味付けは醤油のみ。
別にゆでておいた素麺にかけていただきます。
出汁が何も入らなくても、あぶら麩がコクを出してくれるのです。
出汁をたっぷりと吸いつつも、ちょっとかみごたえのあるお麩がたまらないおいしさなのですよ。
ついでに、あぶら麩の思い出話を。
子どもの頃、お正月などに両親の実家へ行くと、このあぶら麩が、よく物置部屋の天井から吊り下げられていました。
保存食ですからね。
で、市場に流通しているようなものではなく、ご近所から買ってくるそいつは長さが30cmくらいありまして。
ガシガシに茶色い見た目は、まんまバゲット。
それはそれはおいしそうだったのです。
子どもとは言え、それがバゲットではなくあぶら麩だということは重々承知していました。
が、食い意地のはっている私はどうにも我慢ができず、こっそりと端っこにかじりついてみたわけです。
口の中に広がったのは。
油の味。
お麩ですからね、塩味なんて少しばかりもついてはいないのですよ。
サラダ油飲んだのかっちゅうくらいの気持ち悪さでした。
家族から後で盛大に笑われたのも、今ではいい思い出です。