北海道のテレビ局HTB制作のバラエティ番組『水曜どうでしょう』に出会ったのは、今から15年以上前のこと。
たまたま深夜につけたテレビに、ただただカブで走り続ける2人組の背中を映し続ける番組が流れた。
聞こえてくる声は男性のものだし、体形から見ても男性であろうとは予想がつく。
しかし、ヘルメットをかぶっているだけならいざ知らず、正面からはいっさい姿を映そうとしないので、断定ができない。
なんだかやたらと陽気な笑い声と、笑っている人物に悪態をつく声がする。
なんだこれは。
おまけに、カブで疾走している片割れの背中にくくりつけられているのはナマハゲのお面ではないのか。
なんなんだこれは。
あっけにとられ、「この人たちはもしかしてバカなんじゃないか」と首をかしげながらも目を離せなかった。
これが、私と『水曜どうでしょう』との出会いである。
見事に自分もバカの仲間入りを果たすのにそうそう時間はかからなかった。
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最初は、番組名も何も調べようとは思わなかった。
なんだか妙な夢でも見たような気持ちだったからだ。
狐につままれた、と言ってもいい。
とにかく、自分が観たものがいったい何だったのか、よくわからなかったのだ。
そのまま1週間が過ぎた頃、ふと「そう言えば、なんだか不思議な番組をやっていたな」と頭に浮かんだ。
しかし、何曜日にやっていたかさえもよくおぼえておらず、その日はめぐりあうことができなかった。
あれ、いつやってたんだったかな。
放映時間すらあやふやな状態で、なんとなくテレビをつけては、あの番組を探すようになっていた。
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この中毒性は、いったい何によるものなのだろう。
どうでしょう藩士としてけっこうな期間が過ぎた現在でも、誰かにこの番組を紹介するのは苦手だ。
出演者2人とディレクター2人が会話をしつつ旅をする、という企画が多いので、旅番組というくくりに入れてもいいのかもしれない。
しかし、特に名所などを紹介するわけでもなく、それどころか積極的にスルーすることすらある。
旅以外の企画もたくさんあるので、まぁ、要するにバラエティ番組だよ、と説明するしかなくなる。
この番組のおもしろさを言語化するのも、たいへん難しい。
万人向けではない、ということは断言できる。
「1回観てみて。ハマる人はハマるから」としか言えない。
わかる人にしかわからないのが、あの番組なのだ。
ただし、誤解しないでいただきたいのは、これは上から目線で言っているのではない、ということだ。
私自身がそうであるように、どうでしょうが好きな人の多くは、何が楽しくてこの番組にこれほどひかれているのかわからないのではないか、と思っている。
観れば腹筋が痛くなるくらいに爆笑するのに、その理由が何なのかがわからないことが不思議でならず、逆に、誰か教えてくれ、と思っている人が大半なのではないだろうか。
強いて言えば、めちゃくちゃ気の合う友だち、みたいなものだ。
会えば、涙が出るくらい楽しいのに、会話の内容などはいっさいおぼえていない。
「またねー」と別れたあと、満ちたりた気持ちだけが残っている。
その友だちの容姿や性格は関係ない。
でも、その友だちだからこそ感じられる気持ちなのだ。
もしくは、めちゃくちゃおいしいものをおなかいっぱい食べたあとの充足感と言ってもいい。
人によっては眉をしかめるかもしれない、どちらかと言えばゲテモノに近い、けれども、自分にはたまらなくおいしいもの。
とは言え、時に、自分も眉をしかめることがなくもない。
だけど、好きなことにかわりはない。
そんな感じだろうか。